今日は英国国歌「神よ女王陛下を護りたまえ」をお届けします。今日はまず曲を聞いてください。本当は5番まであるんですが、今日は3番までです。
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神よ、我らが慈悲深き女王陛下を守りたまえ
我らが高貴な女王陛下の世が続くことを
神よ、我らが女王陛下を護りたまえ
陛下を勝利と幸福、そして栄光に導きたまえ
陛下の統治が永く続きたまえ
神よ、我らが女王陛下を護りたまえ
主よ、我らの神は立ち上がりめされた
敵兵を蹴散らし、地に落とす
姑息に巡らされた罠も打ち破り
言いたもうた
我が希望は汝らにあり と
神よ、我らを護りたまえ
女王陛下には神から授かった才能に満ち溢れている
女王陛下の世が永く続きたまえ
我らの原理を守りたまえ
我らに大義を与えたまえ
ここに、心を込めて力の限り歌わん
神よ、我らが女王陛下を護りたまえ
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とても荘厳(そうごん)な歌ですよねぇ。
さて、後説の前に、曲を英国の第二国歌と言われているエルガーの威風堂々に替えます。威風堂々は日本でも卒業式のBGMによく使われていますね。ボクの大学院の卒業式でもずっとかかっていた思い出の曲です。
では、後説です。この機会にいろいろな国の国歌を調べてみました。国歌は国の体制によっていくつかのグループに分かれることがわかりました。まずは王制の国、そして共和制の国というグループ分けです。
我が国も含め、王制の国の国歌は「君主の世が長く続きますように、神よ君主を護りたまえ」という趣旨の内容が多いです。「君が代」はまさにそういう内容ですよね。ほかにもスウェーデン、デンマークなどがあげられます。タイ王国の場合、隣国ビルマとの戦争の歴史があるので、割と戦争の内容の歌詞を入っているのですが、タイの場合、第二国歌として国王賛美の内容の歌が別途あります。映画館で上映前に必ず演奏されます。
面白いところでは、スペインの国歌にはメロディはありますが歌詞はないそうです。そういわれてみればサッカーの試合前の国歌はどの国も大合唱するのですがスペインは歌っていません。
対して共和制の国は、独立戦争や革命を経て建国した経緯があるので、勇ましい戦いを描いた歌詞がほとんどです。代表的なものとしては、アメリカの「星条旗よ永遠なれ」やフランスの「ラ・マルセイエーズ」などが挙げられます。ドイツの国歌は200年前にハイドンによって作られた曲ですが、一度ナチスドイツの国歌として採用された後禁止され、改めて国歌に採用されたのは20年ほど前です。東西統一を歌っていますが、ナチスを連想させる1番、2番は歌うことを禁止されており、国歌斉唱は3番を歌うそうです。
ロシアや中国の国歌の場合は、共産党闘争とか、団結とかそういう内容の国歌になっています。
英国国歌に戻りますが、エリザベス女王統治の間はGod save the Queenでしたが、これがGod save the Kingに替わりました。曲中にもQueenという単語が何か所も出てきますが、これもKingに替わりました。
王制は世襲の制度なわけで、我が国の今上(きんじょう)天皇は、初代の神武(じんむ)天皇から数えて126代で、これは圧倒的に世界一長い王朝です。王朝とは一般に男系で、我が国の天皇家は万世一系の王朝と言われているわけですがこれは島国であり、近隣に王国、王族がいないというのも理由です。それで女系天皇問題が議論されているわけですね。
欧州の場合は、いろんな王国があったので、それらの王国が親戚になっていて、結果として外国の王族の家系が王様になるということを繰り返してきました。そして、王様制度は続いていても王朝はちょくちょく変わります。英国の場合、王朝は必ずしも男系だけではないのですが、18世紀のジョージ1世からビクトリア女王までのハノーバー朝はその名の通りドイツ系でした。そしてその息子エドワード7世は女系王なので、父方の家名のサクス・コバーグ・ゴータ朝となりました。サクス・コバーグ・ゴータ朝は第一次大戦時にドイツ名を嫌ってウィンザー朝に改名したのですが、エリザベス2世女王はその第4代君主でした。そした新たに国王となられたチャールズ3世国王はギリシャや北欧の王家であるグリュックスブルグ家出身で、イギリスへの帰化に際してマウントバッテン家と改名したエジンバラ公フィリップ殿下とのエリザベス女王との間に生まれた女系国王です。英国の場合女系王朝を否定してはいないので、ウィンザー朝のままである可能性もあるのですが、チャールズ国王は父方の名前を加えてマウントバッテン・ウィンザー王朝を名乗る可能性もあると報道されています。 最後に、偉大なるエリザベス女王のご冥福をお祈りします。