今週は、ドゥービー・ブラザースのロング・トレイン・ラニングを紹介します。ロサンゼルスのイーグルスと並び称される、サンフランシスコを拠点にしたウエスト・コースト・ロックの代表、ドゥービー・ブラザースはトリプル・リード・ギター、ツイン・ドラムと無謀なまでの重装備のビッグ・バンドです。1971年デビューで、今日の曲は1973年のアルバムからのシングルカットです。アメリカ南部のサザン・ロックの影響が強く、重厚なリズム・セクションを要するファンクなバンドです。
この曲は、アメリカ中西部の大都市シカゴあたりを走る貨物列車に見立てて人生や愛を歌ったのだと言われています。かつては世界最長の鉄道会社、イリノイ・セントラル鉄道やサザン・セントラル貨物という名前が出てきます。
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そこの角を曲がって少し行くと古い列車が走っていて、
キミはそれがずっと遠くに消えていくのを眺めている
愛を無くしてどんな気分で眺めているのだろう?
ルーシーがその線路を歩いていくのを見かけたよ
彼女は家と家族を失った
もう戻って来ることはないだろう
愛を無くしたのさ、どこへ行ったらいいっていうんだ?
イリノイ・セントラル、サザン・セントラル貨物
もっと走り続けなければならない
もう遅れてるんだから
彼女はもういないというのに、どこに行ったらいいんだ?
ピストンは動き続け、車輪は回り続けている
硬く冷たく続く鋼鉄の線路を何マイルも走り続ける
愛を無くしたまま、キミは今どこにいるんだい?
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ロング・トレインというのは文字通り長い列車。延々と続くアメリカの貨物列車のことで、長く続くその線路を、長く走り続けなければならない人生を重ね合わせている歌です。想像してみてください。日本の鉄道とは違います。都会の地下鉄や近郊の通勤列車は日本に似ているんですが、それ以外の鉄道は、アメリカは途方もなく広いんです。そこを走る列車は主にディーゼル機関車です。電線は張り巡らされていません。広すぎるから。やすやすと列車を走らせられないからアメリカは車社会なんですね。
そんなアメリカの列車網はとてもスケールが大きいんです。ボクはシカゴから全米一(いち)アクセスの悪い国立公園、西部のモンタナ州の氷河国立公園までをアムトラックという寝台列車で一泊二日の旅を往復したことがあります。ずーーーーっと続く小麦畑。半日くらい同じ景色でした。人なんかいません。牛の方がたくさん見ました。
列車は時間通りなんかに運行していません。朝6時に来るはずの帰りの列車はお昼過ぎまで来ませんでした。早起きしてホテルをチェックアウトして困っちゃいました。
この曲は、そんな途方に暮れるくらい壮大なスケールの鉄道を人生に見立てているんですね。
そしてロングトレインについて調べてみました。
長いんです。驚く準備はいいですか?
過去の記録を調べると、臨時列車では500車両、約6キロメートル、定期運行の貨物では300車両約5.5キロメートルという記録が残っています。(運ぶものによって1両の長さが違うので、単純に比較できません。)
機関車(エンジンが付いている列車)はもちろん複数で、10両くらいで牽引することもあるそうです。
全米の列車のうち4キロメートル以上の長さが1%あるんだそうです。
世界に目を向けると、最長は、オーストラリアと南アフリカの貨物列車7.3キロメートルで、旅客車ではスイスに100両2キロメートルの列車があるそうです。2キロですよ、2キロ。何両目に乗るかによって場所がとんでもなく違うんですね。2キロというと、東京から神田、秋葉原、もしくは東京から有楽町、新橋が丁度2キロです。
とんでもない長さでしょw
一般的な貨物列車の平均速度は時速約30キロですから、一度踏切が下りると10分以上ひたすら踏切待ちが続くというね。バカみたいに大きいスケールの歌なんです。それが人生だというんですね。
ボクは寝台列車の旅も結構好きで、機会があると列車に乗っています。アメリカ以外では、タイのバンコクから北部のチェンマイまで2回、シンガポールからマレーシアのクアラルンプールまで国際寝台列車で旅行したことがあります。確か退役した日本の寝台列車が走っていたように記憶しています。