今週は、ポール・サイモンのコダクロームをお送りします。
ポール・サイモンは、「サウンド・オブ・サイレンス」などハーモニーの美しいデュオ「サイモン&ガーファンクル」で大成功を収めました。サイモン&ガーファンクルが解散した後、ポール・サイモンはソロとして活動しました。歌詞は詩的でありながらも親しみやすく、彼の楽曲はフォーク、ロック、ポップ、ワールドミュージックなど多様なジャンルにわたり、社会問題や人間関係に対する洞察を含んだメッセージになっていることが多いです。
今日ご紹介するコダクロームは、ニューヨーク市クィーンズで育ったサイモンの子供時代の思い出をモチーフにしています。軽快なギターリフの明るいアップテンポな曲に乗せて青春時代の思い出や学校生活に対する皮肉交じりの回想が描かれています。この曲はビルボード・ホット100チャートでトップ10入りを果たし、サイモンの代表曲の一つとなっています。
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高校時代を振り返ると
よくもまあ、あんなくだらないことを思いついたもんだと我ながら呆れてしまう
ビルの落書きも読めるし、学が無いからって特に不便は感じない
コダクロームは
あの鮮やかな色彩を与えてくれる
夏の萌える緑は
世界中が全部晴れだと思わせてくれる
ニコンのカメラで写真を撮るのが大好きだ
だから、母さん、僕のコダクロームを取り上げないでよ!
これまでに知り合った女の子全員を集めたとしても
僕の甘~い想像力には到底及ばない
どの子もまるで色あせた白黒に見えちゃうんだ
だから、母さん、僕のコダクロームを取り上げないでよ!
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コダクロームとは、イーストマン・コダック社が1935年に初めて市販したカラーフィルムのブランド名です。このフィルムは、発色が非常に鮮やかで、長期間にわたって色褪せしにくいことから、プロアマ問わず多くの写真家に愛用されてきました。
歌詞の中では、このフィルムを使った写真撮影の楽しさを称賛しつつ、ノスタルジックな思い出と共に、現実逃避の要素も織り交ぜられていましたね。
コダクロームは、特に1940年代から1970年代にかけて、風景写真やドキュメンタリーフォトグラフィー、ポートレート撮影などで広く使用されました。ナショナルジオグラフィック誌などの有名な出版物でも、その鮮やかな色彩表現が評価され、多くのカバー写真がコダクロームで撮影されました。しかし、デジタルカメラの普及とともに、フィルムカメラの需要は減少し、コダクロームの使用も次第に減少しました。コダックは2009年にコダクロームの製造を終了し、最後の現像サービスも2010年に終了しました。他の多くのフィルムよりも色褪せにくいと評価されていて、実際に、コダクロームで撮影された数十年前の写真が、今でも鮮やかな色彩を保っていることが多いんだそうです。特有の現像プロセスと高品質な染料の使用によるものだそうです。
これだけ愛された商品の名前を冠した曲ですが、タイアップ曲というわけではなく、ただ単にポールがこのフィルムを好きだっただけなので、CMの曲に採用されることはありませんでした。