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2022/08/08 ♯80 2022-31  じょーじ船瀬のどゆ意味このソング   Piano Man

今週はニューヨークのご当地歌手のビリージョエルのピアノマンをお届けします。

ビリーの曲にはよくニューヨークでの生活の1シーンを歌ったものが多くて、ボクにとって懐かしい名前がよく出てくるんですが、そんなニューヨークっ子のビリーにとって、この曲は変わり種なんです。

1971年にアルバム、コールド・スプリング・ハーバーでデビューしたビリー。もちろんコールド・スプリング・ハーバーはニューヨーク郊外のロングアイランドの地名なんですが、このデビューアルバムで制作会社とぎくしゃくした感じになったんだそうです。レコード会社との信頼関係が揺らいでしまったビリーは、一旦雲隠れして、コロンビアレコードと契約をします。契約関係を整理して移籍する間、ロスアンゼルスのピアノ・ラウンジでビル・マーチンという名前で弾き語りをしていました。

そのラウンジのお客さんのことを歌ったのがピアノマンです。

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土曜の夜9時

いつもの客たちが集まってくる

カウンターでオレの隣に座るじいさんは一人でジントニックを楽しんでいる

じいさんは、「よぉそこのワケーの、俺の思い出の曲をやってくれよ

細かいところは忘れちまったんだけど

物悲しいような、甘いような

若い頃は全部覚えてたんだけどのぉ」

なぁ、ピアノのあんちゃん

歌ってくれよ

俺たちはみんなあんたの曲を聞きに来たんだから

あんたの曲はサイコーさ

バーテンのジョンは俺の友達さ

ただで酒を飲ませてくれるんだぜ

ヤツはジョークのセンスもいいし、俺がタバコを咥えればすぐに火をくれる

でも、本当はもっと他に居場所があるんじゃないか?

ジョンは言うんだ、「ビル、こんな生活はもううんざりだ」

そんなときは笑顔も消えている

「ここから抜け出せれば、俺はきっと映画スターになれるはずなのに」

ポールは不動産屋なんだけど、小説家志望なんだ

嫁さんを探す暇はないんだとさ

ヤツは海軍のデイビーと話してる

多分一生そんな生活をするんだろな

だんだん酔っぱらうビジネスマンをあしらうために

ウエイトレスの女の子はバーの処世術を学び

そう、みんな孤独という名の一杯をわかちあっているんだ

一人で飲むよりずっとマシってもんさ

なぁ、ピアノのあんちゃん

歌ってくれよ

みんなあんたの歌を楽しみにしてるんだぜ

土曜日にしては客の入りがいいな

だから支配人も上機嫌で俺を見ている

だってみんな俺の歌を聞きに来てるんだってわかってるからさ

俺の歌を聞いて現実を忘れたいのさ

俺のピアノはカーニバル

マイクはビールくさいけどさ

客はバーで座って俺の歌を聞いてくれる

そしてチップをくれながらこう言うのさ

「あんた、こんなところじゃもったいないぜ」ってね

なぁ、ピアノのあんちゃん

歌ってくれよ

俺たちはみんなあんたの曲を聞きに来たんだから

あんたの曲はサイコーさ

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ポピュラー音楽には珍しい三拍子の歌です。この三拍子がなんとなく酔っぱらった時の身体の揺れみたいだなとボクは思っています。

この曲の登場人物、バーテンのジョンも、不動産屋のポールも実在の人物なんだそうです。酔客をあしらうウエートレスというのはビリーの最初の妻、エリザベス・ウェーバーのことを歌ったんだそうです。

舞台となるのはロスアンゼルス。UCLAのあるウエスト・ウッドやビバリーヒルズにほど近いウィルシャー通りのピアノ・ラウンジ、エグゼキュティブ・ルーム。

ボク行ってみたことがあるんです。ニューヨークに住んでいたときビリーの歌に出てくる場所には行ってみたくなっちゃって、全部行ってみたんですけど、この歌はサンフランシスコに引っ越してから探しました。大通り沿いの場末のピアノ・ラウンジだったそうですが、ボクが行ったときにはもう取り壊されていて、ショッピングセンターができてました。

いろんな人が行き交うバーで、いろんな人生模様を見るビリー、そんな人たちの束の間の楽しみのために唄うビリー。いろいろあるけど、またがんばろうと思わせる渋めの曲ですね。

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